新たな視座を獲得できること。それが自分なりのエクスペリエンスの定義です。 太田美術館で開催されている「浮世絵の中のおじさん」に焦点を当てた展示は、まさにエクスペリエンスと呼ぶに相応しい展示でした。なるほど、そういう見方があったのか。展示の情報をニュースで見て、まず心を揺さぶられました。(自分の中のイケてるおじさん像確立に向けた活動という側面もあるはず。あれ、自分探し、、、) 幸い太田美術館は原宿にありオフィスからも近いので、開催初日の仕事の合間に立ち寄り。小さな美術館なので、30分もあればぐるっと廻ることができます。するとどうでしょう。これまでは浮世絵を浮世絵として見ていました。でも今は浮世絵を「浮世絵の中のおじさん」を中心に見ている。笑顔のおじさんがいれば阿修羅のような剣幕のおじさんもいる。茶屋で饅頭食べながら一服している人がいるかと思いきや、一方では海を眺めながら一服している。おじさんを見慣れてくると徐々に余裕が出てきて、おばさんもいるな、若い人や子どももいるな。そういえばこのお茶屋の名前は平仮名と漢字で書かれていて自分にも読めるぞ。そんな風に浮世絵の中に描かれている微細な様子がドドドッと見えてきて、何だかハチャメチャ面白い。美術館を出た時はどこかに旅をしていたような気分でした。別にこれで浮世絵を理解したとか語るつもりなど毛頭ありません。ですが浮世絵に対する新たな視座は獲得することができ、見る目が変わった。これは事実です。 よく視座を「上げる」ことに躍起になっている人を見かけまして、それを否定するつもりはありません。視座を上げるとは、より長期的かつグローバルな視点で物事を見ることであったり、会社であればチームでなく全社的な視点に立つこと。ですが、それもひとつの視座に過ぎません。一方で微細で超ミクロな視座もあるし、最終的に大事なのはどちらかというとミクロ。それはひとりひとりの命であり、日々をどう安心して充実感と共に過ごせるか。 なんだか色んなことを考えさせられた展示でした。最近なにかと忙しく更新頻度が下がってますが、引き続き僕は自分の持ち場でがんばっていこうと思います。