
2013年に一度だけ、黒崎さんと一緒にアメリカを横断するツアーを実施したことがある。
結果的にはこれが最初で最後になってしまったのだけど、SOWの「GOOD TRAVEL EXPERIENCE」という事業にしていこうという構想の一環で、6人が参加してくれた。とはいえ、ほとんど友人だったけれど。
ルートはカリフォルニアからニューヨーク、そこからオレゴンへと、東西を行ったり来たりする、なかなか移動の多いツアーだった。
実際に巡ってみると、どこに行っても黒崎さんの好きな店や思い出の場所があり、そして必ずと言っていいほど、黒崎さんを慕う人がふらっと現れる。
これはアメリカに限らず、日本でもヨーロッパでも同じで、黒崎さんとどこかに行くと、いつもそんな感じだった。
今でも強く印象に残っているのは、ニューヨークで出会った黒人の男性の言葉だ。
会話の中でふと、「He is miracle」と言っていた。
向こうからすると、いつもふらっと現れるのはむしろ黒崎さんの方で、世界中をふらふらしているように見えるのだと思う。
でも実際には、ファーマーズマーケットやコミューン、自由大学、滝ヶ原、それ以外にもいろんなことを同時並行で構想し、進めている。
一体彼は何者なんだ。
むしろ一緒に旅しているお前たちが説明してくれよ、というようなニュアンスも、その“miracle”という言葉には含まれていた気がする。
ツアーの準備で二人でロサンゼルスに行ったときは、帰国前に、当時サンディエゴに留学していた一造のところにも一緒に遊びに行った。
そこでもやはり黒崎さんの遠い親戚がいたりして、豪邸に招かれたのを覚えている。
ツアーが終わったあとは、次はヨーロッパ版をやろうということで、下見も兼ねて黒崎さんの欧州巡りに便乗させてもらった。
パリやストックホルム、ロンドン、ケンブリッジを回ったのだけど、大きなスーツケースを持って移動し続けるのではなく、パリを拠点にして各地に行っては戻り、また出かけていくというスタイルが、なんだかとても格好よく見えた。
僕が黒崎さんの言動から学び、吸収したことはたくさんある。
無意識的に真似していることとかも、きっと無数にあるはずで、これがいわゆる師匠の背中というやつか。
まぁ、何でもいい。
黒崎さんはいなくなってしまったけど、折りに触れ頭の中に蘇らせたり、彼の書き残したものを読み返したりして、自分の立ち位置や振る舞いを確認する錨としていきたい。