8/14 晴れ時々ダニエル・ピンクとロウソクの問題

今日は朝から家事。最近週末は外にいることが多かったので、洗濯やら掃除やら。たまっていた洗濯物入れが空っぽになっているのを見ると、妙な達成感が湧いてくる。そして昼過ぎから妻の友達が家に遊びに来て、ワイワイ。

ところでTwitterでも先日少し触れたのだけれど、ダニエル・ピンクさんが週刊エコノミストでの勝間和代さんとの対談で「創造的な働き方をしている会社」の例としてソウ・エクスペリエンスを挙げてくれていた。なんと!!!!

氏の著書『フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか』は会社設立前後くらいに読んで感銘を受け、今でもバイブルだし、何よりもダニエル・ピンクと言えば、アメリカ合衆国の作家でビル・クリントン政権下のロバート・ライシュの補佐官を経て、1995年から1997年までアル・ゴア副大統領の首席スピーチライターを務めた(Wikipediaより)人物だ。 ちょうど来日をしていたらしく、その間に知人に教えてもらった例としてSowを挙げてくれていたのだが(もう一社挙げられていたのはユニチャームだった)、それにしても嬉しい。

この機会に最近のダニエル・ピンクの活動を少し調べてみたところ、TEDでの「やる気に関する驚きの科学」という動画がかなり話題を呼んだようだ。僕も観てみたが、これは実に面白い。

簡単に説明すると、下記のようにマッチと画鋲とロウソクを各チームに渡して「ロウソクを壁に取り付けて灯をともしてください」と問いかける。答えは下記図のBで示されているように、画鋲の入っていた箱も道具として使えることに気づけばすぐ解決できるのだが、面白いのは次の点だ。

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1つのチームには「解けるまでの時間を測ります」と伝え、もう1つのチームには「早く解けたチームには$10を(つまり報酬を)与えます」と伝えると、報酬を提示されたチームはそうでないチームよりも問題を解くまでにより多くの時間がかかるというのだ。市場経済、ボーナス、インセンティブ、モチベーション、これまでのあらゆる前提が一気に崩れていく感じがする。それは他でもなく、報酬という邪念が創造的な答えを生み出す障害になっているのだろうという。当然ながら「$10という報酬が少な過ぎるのでは?」という疑念にも答えていて、$10が十分大きな価値を持つ貧しい国やエリアで実験をしても同じ結果が得られるらしい。

そして更に面白いのは、もしこの問題を少し改造して、下記図のように画鋲を箱に入れない状態で、つまり最初から「箱も道具の一つである」と明らかに分かる状態で問題を出すと、報酬を与えると伝えたチームの方がはるかに良い成果をだすらしい。これはつまり、創造的でない仕事(これを20世紀的な仕事と呼んでいる)の場合には金銭的報酬やインセンティブは大いに意味を持っていたと言うわけだ。

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だからこそ変化が著しく早くなった今の世の中でビジネスを行っていくにはアメやムチといった外的動機ではなく、自主性や成長、楽しさなどの内的動機でなくては創造的な仕事はできないし生産性も高まらないと主張する。

ひとつ残念なのは、今回の週刊エコノミストの対談では上記の実験などは全く紹介されておらず、単に「内的動機が大切だ」という主張だけで終わってしまっている点だ。確かに結論としては間違っていないのだが、一番大切なポイントは「外的動機ではうまくいかない証拠がある」という点だと思うので。

でも、いずれにしても世界的に人気を博すダニエル・ピンクからSowの名が挙げられたことは誇りに思うし、この実験結果もとても示唆的で勉強になった。いやむしろ科学の世界で当たり前になりつつあるこの実験結果がビジネスの世界でほとんど知られておらず実践されていないことは驚きだ。

さて、というわけで引き続き楽しくいきましょう。

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