創業時の失敗から学んだ着眼大局・着手小局(=スモールスタート)

もうすぐ帰宅しなくては、なのですが、サービスリリース19周年ということでひとつエピソードを紹介します。
SOW EXPERIENCEの設立は2005年の5月、けれど最初の商品である総合版カタログGREENをリリースしたのは同年の10月。ここに5ヶ月のギャップがあるのです。この5ヶ月を、僕は今も後悔というか、反省しているという話です。


すぐなくなるものに、5ヶ月を費やしてしまった

年間数十万人が購入し、贈答品としてプレゼントされ、贈られた方々がさまざまな体験をされるサポートをしていく。このオペレーションはそれなりに大規模なもので、その仕組みやノウハウを一朝一夕で築くことはできません。私たちは当初は数人とか10人くらいで、そして今では100人くらいの規模感で、ありとあらゆることに気を配りながら絶妙なバランスを保ちつつ運用している(そして更に拡大すべくチャンスを伺っている)というのが実態です。

ですが、この事業、起業してサービスを開始するまでは割とシンプルなのも事実です。
1.体験コンテンツを集める(いくつかの体験施設と話をつける)
2.1をもとにギフトパッケージをつくる
3.1/2をもとにwebサイトを構築し、売る
これさえできれば商品としては成立し、サービスが開始できるようになります。

2005年5月に起業し、若者数人が駆けずり回った甲斐あって、1は割とスムーズにいきました。そして3も、良いご縁をいただいたりして準備は着々と進んでいきました。僕の記憶が正しければ多分、1と3は起業後2-3ヶ月でスタートするに十分なセットアップは完了できていたように思います。ですが問題は2で、ここにかなり時間をかけてしまったのです。
「贈り物だから信用が大事だし、失礼があってはいけない」という意識が強かったことは事実ですし、そういう気持ちは今も強く抱いています。
ですが、時間をかければかけただけ良いものになるかというと、決してそういうわけではありません。そして実際に、当時最も時間をかけてつくったパッケージは半年以内にリニューアルし、その後も半年くらいのペースで幾度も形を変えていくことになったのです。


そこで学んだ、着眼大局・着手小局

これは2005年の話で、まだユビキタス(常にインターネットに接続しているという意味の、インターネット以前によく使われていた単語)とか言われていた時代ですが、iPhoneの登場もあって世の中は急激に変わりつつありました。
webサービスも次々と登場し、それらのロゴマークの横には多くの場合"β版"と併記されていたことを記憶している方も多いと思います。

「このサービスはテスト運用で、見た目も中身もどんどん変わるから、そのつもりでよろしくね」

そんな意味合いの込められたマークが"β版"だったのだと思います。
そういう時代に突入していたのだから、僕らも、インターネットサービスではないけれど"β(ベータ)版"としてさっさと商品をリリースし、お客様の反応を踏まえて商品を磨き上げていけば良かった。
それなのに、自分たちの妙な拘りと先入観で、動きが遅くなってしまった。これを大いに反省したわけです。

「着眼大局・着手小局」

記憶が少し怪しいですが、この言葉はグラフィックデザイナーの原研哉さんの著書『デザインのデザイン』に出てくる言葉だったと思います。
先ほど書いたような失敗をした後、とある機会に原さんの著書を読み、この言葉を見つけ「そうそう、そうだよな!」と膝を叩いたことを今でもよく覚えています。
実体験があったので、記憶力の悪い僕でも一発で覚えられた言葉、それが「着眼大局・着手小局」でした。

 

すべて最初はβ版

創業期の大いなる反省なのだから、それがDNAとして根づき、今も脈々と、、、と思うかもしれませんが、そう簡単にいかないのが組織というものです。僕らもこれまでの19年間で何度も、この失敗を忘れては、また思い出し、そういうことを繰り返してきました。
そして、結果として今は、大半の新商品は社内で「β版パッケージ」と呼ばれるパッケージを伴ってリリースされます。

ひとつ断っておきますと、もう既に20年近い蓄積がありますし、今のβ版パッケージというのは呼び名がβ版というだけで、完成度としてはずっとそのままでも十分成立し得るパッケージです。
けれど個別の商品に最適化したギフトパッケージを作るのには、リスクが高い。新商品はいつもそういう状態でリリースを迎えるので、そういう状況でも良いクオリティを担保したいからこそβ版という自信満々のパッケージを用意し、新人にはその衣装を着せることにしたわけです。

何だかこう書くと、創業当初の失敗が活きている気がしてきました!

 


思いのほか執筆に時間がかかってしまったのですが、そんな形であーだこーだ言いながら、19年間やってきましたし、これからもやっていきます。
ひとつ確実に言えることは、私たちSOW EXPERIENCEは100人前後のスタッフが(ギフティのグループ会社でもあるので、全部ひっくるめると世界で1000人くらいいるのかな?)、日々とにかく「ギフトを贈る人、贈られる人、そして体験施設の運営会社やSOW EXPERIENCEメンバーの幸せの総量を増やす」ことを目指して奮闘しているということです。
今週も皆さん、お疲れさまでした。そして20年目を迎えるSOW EXPERIENCEを、引き続きよろしくお願いいたします。