「これ”で”いい」学校

ドワンゴ学園が運営しているN高やN中は教育史の年表に刻まれ得るプロジェクトだと思います。例えばウィキペディアの日本教育史の項を見ると、江戸後期から明治を経て今に至るまで、文部省の設置とか東大(帝大)、そして学制の話が大半。現状では、民間の取り組みで掲載されているのは唯一慶應義塾の設立だけです。直近の項だと2006年の改正教育基本法とか2008年の教育再生懇談会設置など。おそらく慶應義塾でさえ、その評価が定まり年表に載るようになるまでに数十年単位で要していると思うので、この予言が正しくてもだいぶ先のことになるのでしょうが、N高N中というのはそういう取り組みであると思います。前回のサッカークラブ同様、自分の子どもに関することなので選択者バイアスが大いにかかっていることは否めませんが。

ちなみに僕にとってN中は「これ”で”いいじゃん」の連続です。これ”が”じゃなくて、これ”で”。例えば、 ー入学前のいわゆる受験はなく、最低限の学力確認テスト ー通学は校舎に行ってもいいしオンラインでもいい ー学習は基本的にアプリを使い、それぞれで進行。分からなかったらチューターに質問 ーサッカー部があるの?と思いきやeスポーツ部 ー入学式(含めオフィシャル行事すべて?)はオンライン。登場する先生や生徒は、実写もいればアバターもいる ー配信はニコ動で「風呂から参加」とか「校長綺麗」「8888888」「学費高い」みたいに激しいコメントの応酬 ー自由時間多く、各自の興味の探索や追求が最優先(自分を振り返ると中学〜大学までの一貫校に通った最良のポイントは自由時間の豊富さだったと思うので、これとても大切なことだと思います) ー遠足は物理もあればマイクラもある。物理で出かけた先で皆でマイクラとかもあるらしい。謎

公立・私立問わず、世の中には多くの素晴らしい学校がありますし、そこで最高の時間を過ごし経験を楽しんでいる人は大勢います。それはそれで素晴らしい。一方で今の学校にフィットしない子どもたちも大勢出てきていて、僕の子どもたちも、そういう部類です。彼らの生まれ育った時代と”学校”というスタイル、いやコンセプト、にギャップがあるので、それは必然だと思います。誰が悪いとかではない。この5年の不登校児の急増の一部または大部分は、そのあたりに起因するのではないでしょうか。 既にN高は2-3万人の生徒数を抱えており(おそらく日大?を超えて)日本一のマンモス校。きちんと調べてないですが、日本の高校生って3学年で300万人前後とかだと思うので、つまり高校生の1%がN高生という計算になります。これが3%とか5%とかになると、いよいよ社会に大きな影響を与えてくるのでしょうか。N中はさすがに文科省の定めるカリキュラムを逸脱し過ぎているのか、中学校とは名乗れずフリースクールの扱い(つまり所属は公立)ですが。

まだ入学前の輪郭がぼんやりした状態なので、これからまたいろいろ出てくるはずです。ですが今このタイミングだからこそ書けることもあろうかと思い、少し書いてみました。 最近にわかにチョコザップが増えていて、そのスピードとスケール(そして他社には真似しづらい内容)に驚かされます。ですがそれよりも遥かに静かに、けれどより大きな波としてうねりつつあるこのプロジェクトがどう推移していくのか。当事者でも部外者でもない、微妙な距離感を保ちつつ観察していきたいと思います。また気が向いたらレポします。