今、1年ぶりに自由大学の講義を開いているのだが、毎回思うのが「もっと講義がうまくなりたいな」ということだ。 先生と生徒。別に普段はお互い無名の生活者であるわけだし、この先生と生徒というのは、この講義つまりこの時間この場所にこの目的のために集った人の間だけでのごくごく限られた合意だ。なのでそれぞれ先生を、そして生徒を演じていると言っても差し支えないと思う。 でもせっかくやるからにはうまくなりたい、うまくやりたいと感じる。 今、僕がうまくなりたいのはゴルフでも子どものあやし方でも経営でもなく(いや経営はもう少しうまくならねばならない、自省。)、講義のやり方だ。
最近でこそ大学の講義などはネットで配信されるようになったが、それでも世の中の大半の講義は密室で行われており、実際にどんな進行でどんな雰囲気の中で講義が行われているのか、僕らはほとんど知らない。 知っているのは自分の限られた経験というか、学校教育時代のかすかな記憶のみだ。
この間、会社を一緒に創ったデザイナーの堀太誌君が、彼の大学時代の恩師の講義が面白かったと教えてくれた。 曰く、輪になった15人ほどの生徒に対して先生がボールペンを指し「これは何ですか」と問いかける。それに対して生徒が順番に答えていくのだが、同じ回答をしてはいけないというルールがある。最初の生徒は「ボールペンです」と答え、次は「字を書く道具です」などと答え、とすると次は「作家の必須道具です」と言い、、、まぁいわば思考のトレーニング、柔軟体操みたいなものだろうか。
この話を聞いて面白いなと思った。ほんと、色んなやり方があるなと。 そして同時に思うのは、1対Nになりがちな大教室の講義よりも、10人とか15人とか、もしくは普通サイズの教室一つ分くらいで行われる講義の方が先生ごとの個性が出て差異があって面白いかもしれない。
これはただの空想だけれど、例えばどこかの普通の小学校で、あ、生徒がほとんどいない田舎や離島の小学校とか良いかもしれない、そこで月曜〜金曜まで、1時間目から5時間目まで、全部の授業をリアルタイム配信して、日本中の、世界中の人が見られるようにしたら、案外スタンフォードやらハーバードやらよりも面白い講義が行われていたりしないだろうか。 いや、あり得ると思うのだけどな。