この記事は僕が講師を務める自由大学未来の仕事の講義録です。 毎回、ゲストの話を聞いた後に、受講生による新しいプロジェクトアイディアの発表などを行っています。
◆第3回 未来の仕事 ゲストスピーカー 株式会社京和木材 青木健太郎氏 モデレーター 西村 琢氏 青木健太郎さんは、ソウ・エクスペリエンス・オフィスのシェアオフィスを進めるにあたり、 モノづくりをしている人々にターゲットを絞ったところ、 興味深い活動をしている材木屋さんとしてつながったそうです。 「青木さんの仕事について教えてください。」 京和木材は、木材流通の二次問屋として、工務店さんや内装業者さん、デザイナーさんの要望に応えた木材を納める仕事をしています。 その中で、僕は企画営業としてクライアントニーズを取材し、現場職人や材料の仕入れを行う立場を担っています。 銘木と呼ばれる化粧材から、下地材といわれるものまで、いわゆる『木』といわれるものは、なんでも扱う。 たとえば、港区には坂が非常に多いですよね。 道路際にはその坂の名前が、書いてある案内柱が設置されています。その材料であるヒノキを納品してたり。 ときには近所の幼稚園さんから、杵と臼の修理を頼まれることもあります。製材はすべて、請け負っていますね。 「青木さんにとっての今の仕事と、これからの仕事は何ですか?」 今は、 注文を受けた木材の調達だけでなく、施工先の空間や条件に合わせた材料の提案もしています。 やはり、木を使うことは、日本の文化だという考え方も根強く残っていますので、それを活かした企画性の高い営業を心掛けています。 同時に、木の性質を知り尽くしているプロとして、空間プロデュースの際、適材適所で最適な材料の提案をしています。 これからは、 消費者の欲しいと思える商品の開発をしていきたいと考えています。 京都議定書の採択をきっかけに、港区では、新しい条例が制定されました。 それは、一定規模以上の建築物に区独自の省エネ率を求める港区民間建築物低炭素化促進制度というものです。 これにより、みなとモデル二酸化炭素固定認証制度を踏まえた木材の利用が、建築主側に課せられたのです。 期せずして木材流通業を担う「若手の会」というものが発足されていますので、 これを追い風として、ただ受け身で受注を待つだけでなく、ニーズに応えた新商品の開発中です。 また、国産木材は高いという印象をお持ちだと思いますが、最近は、ロシア産のアカマツよりも、国産のスギのほうが安く提供できることもあるんです。 新商品は、こうした背景を踏まえて、たとえば、無垢のフローリングや、壁材を開発しています。 スギ材のフローリングは、断熱効果も高く、化学物質を使用していないのでシックハウス症候群の方に大変喜ばれています。 ただ、木材は、製材しても年々変化しています。個性だときちんと理解して、使っていただけるといいですね。 「青木さんにとって未来の仕事とは?」 一言で表現すると、ミクロとマクロの環境作りです。 ミクロは、ひとつひとつ、どんな難しいオーダーにも、嫌がらずに応えていくこと。 南極の昭和基地の天窓を作って納品したりもします。温度変化が激しいので、一般的に使われている材料であるアルミは、南極では使えないんです。 マクロは、日本の大切な資源である森を守るということ。課題が多い難しい問題です。 日本に多い針葉樹林は、人の手によって手入れしないと、死んでしまうんです。 終戦後に植えられたスギの大半は、樹齢25年以上のものですが、後継者問題や賃金の問題で計画的に伐採が進んでおりません。 ならばカーボンオフセットが期待できると考えがちですが、スギは樹齢25年を超えると、活発な光合成が行われなくなるのです。 日本の森は傾斜の厳しい斜面が多いため、大型機械による効率的な作業が難しく、技術を伴う職人の手による伐採となるのですが、 厳しい労働環境から、後継者が育っていかないという現実を、考えていかないといけません。 ●青木健太郎氏プロフィール 獨協大学経済学部卒業後、IT関連企業へ入社。 在職中に、早稲田大学理工学部 芸術学校課程を経て、千葉県千倉市にあるお寺の離れを100万円で建てるプロジェクトに参画。 木材や現場業務の面白さに魅了され、父の営む株式会社京和木材(東京都港区白金)に転職。現在34歳。 以上。