未来の仕事第10期 第4回 ゲスト:社団法人日本料理研究会 三宅健介さん

この記事は僕が講師を務める自由大学未来の仕事の講義録です。 毎回、ゲストの話を聞いた後に、受講生による新しいプロジェクトアイディアの発表などを行っています。

1、三宅さんの仕事(事業)について教えて下さい

社団法人日本料理研究会理事 会社運営と事業展開をしている。日本料理技術の広報による、調理技術の共有・発展と調理師の地位向上を目指す。

・はじまり 調理師の技術は昔、親方から弟子に伝えるものだった。今は全国各地にある調理師会が伝えているけれども、全国でバラバラに行われている。このままでは廃れていってしまう…ということで、新聞記者だった祖父が技術の共有を新聞でしていったのが始まり。今は新聞から「月刊日本料理」という会報誌になっている。技術指導者をプロ対象の講習会や会報に呼んで、技術を伝えている。

・新しいサービス 6月23日に“日本料理研究会レシピる!”という、本格的日本料理のレシピ検索サイトをスタートさせた。調理師が見たいときにいつでも見れるように、今までに研究会で培ってきたレシピを公開している。誰でも見ることは出来るけれども、料理を生業としている人を対象としている。内容の深いところは会員制になっている。裾野を広げたいならフリーにという考え方もあるが、逆に対象を絞り有料にすることで本当に学びたい人だけが使ういいものになっていくと考えている。

・調理師の世界 調理師は狭い世界に閉ざされがち。技術を学ぶ時間が少なく、また気軽にいつでもどこでも調べることができない。この検索サイトで日本料理の調理師はもちろん、他のジャンルの料理にも日本料理の技術を生かしてもらえればと考えている。今調理師をしている人はwebを使える人が少なく、サービスを始めるにあたって研究会役員に内容を伝えるのにも、会員にサービスを知らせるのにも“インターネットとは”から伝えなければならず苦労したが、いつかは本だけではなくwebも必要になるだろうと思っている。

・若い調理師にビジョンを 月1で調理師専門学校の学生などに無料で講習会を行っている。そこで技術を持つ人に触れることで「こうなりたい!」と憧れを持ち、将来のビジョンを描いて欲しいと思っている。そのうちustreamでの公開や、同じ境遇の人たちが情報交換できるSNSも作りたいと思っている。

・広告費 企業は不況の為、広告費を出すときに対費用効果を求め、成約を求めている。そうではなく、「文化事業を支えて下さい」という切り口でスポンサーについてもらっている。「未来のお客様を作りましょう」という考え方。

2、三宅さんの経歴・転機を教えて下さい

05年3月慶応義塾大学経済学部卒 05年4月東京海上日動火災保険株式会社 入社 09年6月退社、社団法人日本料理研究会 入社

転機:東京海上日動を退社した時。曾祖父(父方の)が作った会社を継ごうと決意。

父を亡くしていて、以前父がこの仕事を継ぐという話もあったと聞くと、日動にはいくらでも代わりがいるけれど、この仕事をしなかったら今後後悔するだろうと思って決意。それまで日本料理に全く興味はなく、1,2ヶ月考えて決断をした。

始めに感じたのは「なんて閉鎖的なんだ」ということ。事務員も役員も皆年上。年二回の理事会の為に根回しをするが、なかなかご理解頂けないのが大変。それでも「若いのが生意気に」と思われないよう、「日本料理を世界に広げたくないですか?!」「それならこれもあったほうがもっといいですよね!」というように、ビジョンから伝えていっている。Noとは言われない方法で。

3、三宅さんにとって未来の仕事とは?

・日本料理を海外に 海外のシェフにアプローチしていきたい。日本料理といえば寿司や焼き鳥しか知らない海外に、本当の日本料理を伝えていきたい。他の料理でも日本料理の技術の一端を取り入れる事で、新しい食文化が生まれるきっかけになればと思っている。日本料理で使われる器や道具などの素材なども広げていきたい。

・日本料理のスターを 日本料理を志望する人が少なくなってきている。シンボル的な存在が出来て、憧れが出来て、目指す人が出来ていく。そこがゴールかなと思っている。スターを作ること、シンボル的な存在を作ることは自分たちがやっていかなければと思っている。

・最後に 大きな企業だと、最初から資本も人材も揃えてどんと始められる。でも規模が小さいと資本・人材を外に求めなければならない為、どうしてもスピード感がでない。信頼できる人に出会うということも大切だが大変なこと。でも、これが醍醐味なのかな、とも感じている。