この記事は僕が講師を務める自由大学未来の仕事(10期募集中)の講義録です。
◎ゲスト:黒崎輝男さん ・自由大学という場 今、学校は、試験に出る問題を教える場になっていて、 でもそんな問題は、インターネットで調べればすぐに答えは出る。 学校は、「勉強しないといい学校に行けないよ、就職できないよ」といって、 恐怖心を煽って勉強させる場所になっている。 また、先生になって教えるためには、教員免許がないといけない。
一方、自由大学は、積極的に学びたい、と思う人が学べる場所であり、 先生も資格は必要ない。 生徒が聞きたい、聞いてありがたいと思ってもらえれば、それが授業になる。 本来、学校とは、学ぶとは、そういうものではないか。 学びたい人が積極的に学び、技術や知識を持っている人が、 持っていない人に教えるもの。 これまで学校で教えてきた、我々が目指してきた社会人やサラリーマンが、 いざというときに、実は役に立たない、ということに気がついたのが、 今回の震災ではないか。
・3つ選択肢を持つ 3つくらいの選択肢を持つといい。 例えば、一つは生活の基盤となる仕事、あとは知的所有権や利権など自動的に お金が入ってくるようなもの、もう一つはチャリティとかボランティアとか。 ・日本をハブにしたい。 ハブとは中心になる部分のこと。 日本は、例えば、成田空港がまずハブではない。 アジアの他のハブ空港と呼ばれるところは、24時間利用できる、安い、 かっこいい、便利、食べ物がおいしい、デザインが格好いい、など。 目指すところは高く、でも利用しやすい誰でも来られる低さ、も大事。 ・「未来の仕事」や西村さんの存在もハブ 「未来の仕事」が何か、その答えがあるわけではない。 でもそれがいったい何なのかを、様々な人の話を聞いて、 考える軸を作るところ 西村さんから、技術を学ぶのではなく、その生き方、姿勢を学ぶ。
・「マグニチュード9.0」以前と以後 元々この数年、今回震災の被害にあった東北をはじめ、 日本社会が崩壊しかけていた。 例えば、漁民、農民、林業の担い手が高齢化しており、森は手入れされず、 森からの栄養で成り立つ豊かな海も失われつつあったのではないか。 若者は、就職活動をしても仕事はなく、せっかく就職できても、 大きな会社までもつぶれてしまう。 日本の文明の発展も、大自然の前には何の力にもならなかった。 自然の声を聴く。耳を傾けるべき。 ・津波に立ち向かう 船に乗っていて、津波が来たら、どこに逃げるのが安全か。 選択肢は3つあり、1つ目は船を降り、山へ向かって走って逃げる方法。 これは津波に追いつかれなければよいが、追いつかれると飲みこまれる。 2つ目は、海岸沿いに逃げる。これは津波から逃げることはできない。 3つ目は、沖に向かっていくこと。津波に向かっていくこと。 実はこの3つ目が江戸時代から言われていた助かる唯一の道だった。 何かあったら、逃げずに、対峙する、立ち向かうことが、 今求められているのではないか。
・「Earthquake」から「Heartquake」:英知を前へ これまで、クレバー(clever)、スマート(smart)な人、決められたことを 正確に、事務的にこなせる人が重宝されていたが、 これからは、ワイズ(wise)な人、知恵のある人が必要とされる時代が来た。
今回の震災でも、予想外の大きさの津波が来たため、避難したのに、 その場所以上の高さの波が来たり、自動車で逃げようとした人が亡くなり、 自転車で逃げた人が助かったり、これまでの常識が覆された。 例外がいっぱいあった。これからは自分で判断できる人が求められる。
今回の震災を受け、Hearquakeという財団をつくり、海外の人を含め、 様々な職業の人を集め、つながる、共に分かち合う場を作っている。 何かしてもらおう、と思っていて、何もしてもらえないより、 大変な状況だけれど、「何かしてあげよう」と人を助けよう、 手伝おうと思っていた方が、精神は安定する。 実際に被災地に行ってみて、移動映画館や、遊園地、図書館を作ったり、 自由大学を被災地でやろうかと思っている。
(飲食店を経営している早川さんの自己紹介を受けて) ・これからは、つながる場、を作ることが大切。 どこに行こう、となったときに、「あいつのところに行こう」と 思ってもらえるか。 あとは、食材。おいしいものだけを使う。 震災後、ファーマーズマーケットが大反響で1日500万円もの売上がある。 これまで野菜は、農協を通して、形の決まった、一定の基準を満たしたものが 安全とされ、販売されてきた。 けれど、今は農家の方が直接、形は悪くてもおいしいものを提供したい、 またお客さんもそういった野菜を買いたいという意識に変わったのでは。
(仕事以外に、吹奏楽団をまとめる民樹さんの自己紹介を受けて) ・何通りかの生きる方法を見つけるといい。 週7日のうち、5日会社で働くなら、あとの2日で学んだり、 他の可能性を探したり、人を喜ばす、与えられるものはないか、考える。 こういうときこそ、見えるものがあるのではないか。 経済的に豊かでなくても、自己実現ができて、ナリワイとして 成り立つことが大切。 大変なこともあるけれど、おもしろいこともある。
(以前高校で社会科の先生をしていた吾郷さんが、「教える立場」なのに、 何も社会を知らなかった、という話を受けて) ・キュレーター、キュレーションという仕事もある 先生が知らなくても、その分野に詳しい人を呼んできて授業をする。 仙台でも被災して引っ越してしまった農家の一軒家を借りて、 そこを拠点に何かしようと思っている。 例えば、被災地に本を集めて持っていく。 その本をただ配るだけではなくて、おもしろい本を紹介したり、 その本を読んだ感想を聞いたりすることで、 本という素材だけでなく、人との交流の場も提供することができる ・学生は今、親が授業料を払ってくれて、自主的に学ぶことをしていない。 学生がお金を払ってでも聞きたい授業をするのは、難しいけれど大事なこと。
(それぞれの自己紹介を受けて) ・「こういう生活をしたい」「これが好き」というものを仕事にしたり、 興味があることを勉強するべき。本当に好きなこと、やりたいことを つきつめないと。土日だけでも始めてみたらいい。
・今は美術大学の学生でも、アーティストを目指すのではなく、 どこに就職できるか、を考える時代。 就職するために、学校に行く。一般大学と同じ。 でも、「収入があること=仕事」ではない。 かつて、学生時代に海外で、職業欄を書くことがあり、 本当は「学生」だけど、「革命家」と書いたことがあった。 「会社員」と書かない場合、何と書くか、考えてみるのもいいのでは。
・学生時代に、学校とクラブ活動の2つの軸があったとしたら、 今は、仕事と趣味と、もう1つ何か探してみる。 会社での働き方を、1つ持っていて、それ以外の道も持っておく。
・恐怖心に煽られて、やりたいことをやらないより、 いろいろやってみた方がおもしろい
・少しずつやってみる 考えながら、一歩一歩やってみる 向いていることを1つ2つやってみる 東京で食べられず、飢え死にする人なんて、見たことない ・失敗してもいい勉強、負けてもいい勉強 失敗した方が成功するより多くのことが学べる